事件

　恐れていた事件が起きた。

　虐殺から気を吹き返したばかりの山椒の木に
　しれっとアゲハチョウが卵を産み付けて行きよった。

　朝のコーヒーを飲むと、日課のようにぶらっと外へ出てうちの子たちを満足げに眺めてる父親が
　うちの中に戻ってきて、これまた満足げに
　「おい、アゲハチョウがうちの山椒の木に卵を産み付けていったぞ」
　と言った。

　なにが楽しいんじゃ。
　一大事やがな。

　しかし本人はアゲハチョウが産卵する所を産まれて初めて目の当たりにして
　痛く感激している様子だった。


黄色いビーズ posted by (C)鶴生館

　聞いた話によれば、アゲハチョウの幼虫は一匹で山椒の木一本を
　丸裸にしてしまうほど食欲が旺盛だというのに、
　（アゲハチョウはもともと山椒の木を好んで産卵するんだそうです）
　うちの木に産み付けられた玉子は1つだけではなかった。


悪名高き posted by (C)鶴生館

　蘇ったばかりのつんつるてんの山椒の木に
　無情にも3つもの卵が産み付けられていた。


かわいいけれど posted by (C)鶴生館

　アゲハチョウって数が減ってきているとは聞いているけれど、
　うちの山椒の木は、枝を全て切り落とされるという憂き目を
　やっと生き延びて、最近はが生えてきたばかりだし、
　確かにだからいかにも葉っぱがやわらかそうで、それが
　美味しそうに見えるのも分かるんだけど…。

　小一時間ほど悩んだ末、結局卵を産み付けられた葉ごと
　切り取ってしまった。
　ごめんよ、アゲハチョウのお母さん。

　だって、今までうちの山椒の木になんか産みに来たことなんてなかったじゃん！
　なんで今年に限って！
　うちの山椒の木がこんな目に合ったこんな時に限って！
　不思議だ…。

タグ：アゲハチョウ 山椒の木 卵 産卵